1人とポニーと道

ひとりすと日記

ある生き物の最期

 一昨日の仕事帰り、帰宅時間で通行量が多い中、

車にはねられ道路の真ん中に横たわるネコを見ました。

頭の下には血溜まりが。

(死んでいるかな。かわいそうに)と思い、通る時何気なく見ていた所、ネコが動きました。

時折、起き上がろうと前足を踏ん張っています。

私はかわいそうに思い、車を停めると、ネコに近付いて、

背骨が折れていたらいけないので、両掌をしっかり開くと身体の下から手を入れ、

そっとネコを掬い上げました。

掬う時、柔らかな毛並みと、まだ元気な心臓の拍動と、温かなネコの体温を感じました。

(まだ生きている!)

頭部への衝撃が酷かったようでした。

健康な時は、その姿でいつも人々に愛嬌を振りまいて、可愛がられたこともあったことでしょう

でも今のそのネコの顔を見たら、私は、失礼にもその気の毒なネコを放り出してしまうかも知れない

と思い、倒れたままの横顔しか見ないようにしました。

歩くと、ポタ、ポタと血が滴ります。
 
辺りを見回して、せめて踏まれない所、轢かれない所へ。

道路脇の花壇の土の所にそっと降ろしました。

降ろす時、生暖かく、ぬるりとした感触を感じました。

降ろした後、無意識に両手が震えました。

目は、閉じてあげることが出来ない状態でした。

病院に連れて行けば、もしかしたら助けられるかもしれないけど、

私には今、多分回復させるだけのお金は無いし、面倒をみることが出来ない。

だから、そのまま。

人間以外の生き物は、自分で病院に行くことはできない。

何をされても訴える言葉がない。

お金を使っていつでも病院にかかることができる人間として、

神様から、特別な2本の手を授かった人間として、とても後ろめたい気がして、胸が痛みました。

私は、自分が治してあげられないから、その命に対して

(誰かに助けて貰えたら) (せめて苦しまずに天国へ) (どうか次に産まれる時は幸せに)

などと思っていました。
 
次の日そこを通りかかると、ネコは手足をピーンと伸ばして、もう動きませんでした。

目は閉じられているように見えました。