1人とポニーと道

ひとりすと日記

11月のクリスマス

 ドライブに行きたいな。

外は寒いけど、車の中はホカホカだし。

銀世界、きれいだったなあ・・・

 
 銀世界を体験したあの日は、寝坊した(半分わざと)。

凍ってるだろうし、現地で氷が融けてるんじゃないかと思う時間帯に着きそうな時間まで。

いい具合に寝坊したから6時発で~(笑
 
 4時40分に目が覚めて、行こうかどうしようか迷っていたら、

窓の外で、ピューピュー吹き荒ぶ風が私を呼んだの。

「是非ともこの風の中を走りたい(※エアコン完備の愛車で)」と強く思った。

思ってる内に身体に力が湧いて来て。

 そして起き上がり、発った。風の中を。

冬の日曜の朝は、結構いいペースで流れてた。

BPからは、純白に、まばゆく輝く・・まさに雪の女王たる「山」が見え、

(心に、千住真理子演奏の「スノーダイヤモンド」流れる。)

(なんて~美しいのかしらー!ああ、見られて良かったあー)と感・激!

金色の朝日が、金のまだら模様で、次第に世界を照らし出す光景にも感動。
 
 更に、こんな明るい時間に発ったのは久しぶりなので、

世界が明るく広く、どこまでも見渡せる安心感にも感動。

(私って、やっぱり昼行性のヒトなんだわ)と改めて自覚。

 海沿いの国道の上以上、山頂未満では、

陽に照らされる、一面の紅葉の原の美しさに カ・ン・ゲ・キ。

山という山が、ほんとに錦の着物を着ているのだ!黄色もほんとに「こがねいろ」で!

それでいて、辺りに連なる山々の頂きは、チョコレートケーキに粉砂糖を振り掛けたみたいに

美味しそうに白くなっていた。
 
 ああ・・この世界って何て素晴らしいんだろう・・・!

と胸いっぱいになりながら、良い調子でスーイスイッと進む。

 麓の外気温、既にー2℃(心の黄信号点滅開始)

私はこれまで、凍結の危険のある道路には近付いたことすら無いのだ。

だから、例年ならとっくにこちらへのドライブは自粛している。

だから、この時はちょっと、命懸けだった。

 ~虎穴に入らずんば、虎児を得ず。~
 
とりあえず、出来る限りの対策として速度を30~40キロに自粛。

タイヤに少しでも違和感を感じたら、即対応するよう

(自動車学校で聞いたようにしよう、と、その程度の知識しかないけど)

心に決め、目の前の路面を凝視しながら、ノロ~・・ノロ・・進む。

 峠の下の、道路脇の森の、黒々と繁る木々の叉に、残った粉雪を見かける。

峠のトンネル手前から、フワフワ舞う粉雪に遭遇。

この辺りから、路面に小さな白いラムネみたいなものが無数にコロコロしだす。氷の粒らしい。

(こういうの、「アラレ」って言うのかな?)

=路面温度は氷点下?かな。(危険信号点滅し続け)

(頂上、雪積もってませんように ドキドキ。坂で滑りませんように。)

(ガンバレ■■■(←愛車の愛スニーカー。愛タイヤの商品名)しっかり地面を掴むのよ。)

 無意味だろうけど、愛車の愛タイヤをも励ましながら、且つ、

神様にも、愛車と私の無事の帰還を願いながら、じりじりと進む。

路面は所々黒く濡れ、液体の水溜りもある。

(液体と固体が同居してる。どういうこと??? とにかく用心用心・・・)

 山頂に近付くと、付近一帯の山頂がみんな真っ白で、綿帽子を被ってることに気付く。

周囲の木々も、いつの間にか真っ白だ。(わー!きれい!)

 真っ白・・・近くを通る時、よくよく見れば、樹氷がびっしり付いている。

樹氷・・・確かそれは、ものすごく冷えないと出来なかったんじゃあ・・・

 私の記憶は曖昧だ。

雪のことも、山の気象のことも、良く知らない。

にしても、自分で愛車を運転して、こんな銀世界に来たのは初めてなので、

危険を冒していると言うのは感じるけど、う、嬉しい!

美しい!感動だ!
 
 山頂近くの、湧き水のある場所では、そこを取り巻くように飛沫が凍って

キラキラときらめく王冠みたいになっていた。

 斜面から突き出た岩からは、30センチ程もあるつららが2本伸びて、輝いていた。

(すごーい。私の家の方ではこんなの無いよ。)感激し続けながら、尚も走る。
 
 その内、少し吹雪いてる粉雪に、インコの綿毛位のフワフワしたものが混ざり出す。

山頂近く、ー5℃。(赤信号、せわしなく点滅)

 途中、地元ナンバーの、「車の形をした氷」みたいな車とすれ違う。

(き、昨日から山頂に置きっ放しだったのよ。あの車)と自身を安心させる。
 
気が付くと、後ろから他県ナンバーの1BOXが迫っていたので、

凍結路若葉マークの私は、さっと、そーっと道を譲る。

(何だか普通の速度で走り去って行ったなあ。)

(あれがあのスピードで、この先コケてなかったら、私も大丈夫だわ。)という事にし、

尚もノロ~・・ノロ・・・と、はた迷惑そうな速度で進む。

 山頂まであと一登り、という所で、雲の中に入ったのか、辺りにもやがかかり、吹雪き出した。

雪のことを殆ど知らない私にとっては驚異だ。

 戻ろうか少し迷ったが、ここまで来ているのだから、ほんの少でも山頂を覘いてみられたらと思い、

ソロソロ進んだ。
 
 山頂は・・・ホワイトクリスマス!!!感激だった!

黒い道路と駐車場以外、一面真っ白。

それはそれは目がシバシバする程の、まばゆい銀世界だった。

植物達は、全て天然のホワイトツリー。

足元の、草の根から木々の枝先まで、びっしりと、5センチもある厚い樹氷に覆われていた。

その一つ一つは鳥の羽根のようになっており、ほんとに天使の羽根のよう。

なんてロマンチック!

ああ・・こんな素敵な光景見た事無い!

それに、なんて清冽な空気!

やっぱりここは大好きだ!

来ることが出来て、本当に良かった!

(私を無事に、快適に、ここへ連れて来て下さった神様、愛車、愛車の愛タイヤさん、ありがとう!)

 駐車場は雲の中だったようで、牛乳の中に居るように靄がかかっていた。

到着時間は遅かったが、季節柄、殆ど車は居なかったので、

いつもの定位置に愛車を停めることが出来た。
 
 少し休憩し、一度目の鐘の音を聴いてから、辺りを散策する。

足元はシャーベット状だが、4月末に来た時のような、

耳も鼻も千切れて飛ぶかと思うような、数メートルも歩けば凍って二度と動けなくなりそうな、

そんな寒さは無かった。

 いつも立ち寄る土産物屋に入って一周し、

そこの大きなガスストーブで、服が焦げそうになるまで身体を炙り、また外を散策した。

そしてお気に入りの場所に立つと、いつも懐かしく感じる、辺りの風景を眺めた。

 やがて、2度目の鐘が鳴り響き始めた。

私は、この鐘の音も大好きなのだ。荘厳で美しくて。

 ずっとここに居たかったけど、粉雪・綿雪・ラムネ粒(霰?)がまた吹雪き出したので、

山の天候に詳しくない私は、後ろ髪を引かれる思いで、その幻想世界を後にした。

 この日のBGMは、ヴァイオリンやピアノ、ソプラノの賛美歌など。

これがまた、色鮮やかな山の風景や、吹き荒ぶ風の音、それに、

舞い飛ぶ粉雪や綿雪、ラムネ粒にぴったりなのだ。

 運転と音楽と風景に、うっとり夢中になりながら、のんびりと帰宅した。

そして、私がハンドルを握れる限りはあそこに通い続けようと、また心に誓ったのだった。

 長い回想でしたが、ここまで読んで下さってどうもありがとうございます。

来年が、あなたにとって良い年となりますよう、心からお祈り申し上げます。